「ああ、そういえば紹介してなかったな」


そういって燿はあたしをグイッと引っ張ったかと思いきや、彼らの前に出しぽんっと肩を叩く。


「俺の妹だ!」


と、ドヤ顔で彼らに紹介する。


そんな燿を見て「……妹?」と首を傾げる彼らと、ガクッと首を下に下げるあたし。


……ばか燿。

そんな紹介しても分かるわけないのにドヤ顔で言わないでよ。



「燿って確か一人っ子じゃなかったっけ?」



茶髪に緩いパーマの男がそう呟いた。



「紬玖は家が隣で家族ぐるみで仲が良くてな、昔から可愛がってる妹みたいな存在だ」



「隣の家……って、もしかして」



何かを察したのか、もう一人の黒髪の男が燿を見た後、あたしの顔に視線を移した。



「ああ、そのもしかしてってやつだ。

紬玖は妃茉(えま)の妹だ」



「……驚いた、本当に妃茉ちゃんの妹なの?

全然似てないねえ」



……そりゃそうだろう。

今や誰も知らない者はいないと言われるほど、私の姉は顔が整いすぎているのだ。


そんな姉と比べたらあたしなんてちんちくりんでデブでブスなのだから似てるはずもない。



「紬玖、俺の仲間を紹介する。

こっちの茶髪パーマが不破瑞希(ふわみずき)で、隣の黒髪ストレートが九十九凪玖(つくもなぎ)な!」


浅くお辞儀をすると、「よろしくね〜」と軽い言い方で手を振る瑞希と何も反応を示さない凪玖。



たしか、瑞希が燿と同じ歳で凪玖があたしと同じ歳だって燿が言ってた気がする。


その言葉通り、瑞希は不思議と余裕のある大人びた顔をしていてにこにこするその笑顔に何人も虜にしているのは間違いなさそうだ。



対して凪玖は無口でクールな性格で他人に興味を示さず話しかけるな、と言っているような雰囲気を出していた。


……まあ別にあたしも話すの得意ではないし興味は無い。



「……驚いた、俺らの顔見ても何も反応しないなんて」


と、瑞希が目を開いてそう呟いた。



「紬玖はあんまり顔には出さないタイプなんだよ。

まあ、そもそもこの俺が近くにいたから免疫はついてるかもしれねえな」


ガハハッ!と豪快に笑う燿に瑞希は「なるほどね、確かにそれなら納得」と頷いていた。



「つ〜〜ぐ〜〜ちゃ〜〜んっ!!!!」



大声で名前を呼ばれ、声がした方へと顔を向ける。



「……っ、」



声の主がものすごいスピードで走り迫って来るのを確認し、思わず体が硬直する。