「ダメダメ!絶対に通さないから!」


目の前のこの男にそう言われ、眉を顰める。


……まいったな、どうしたらいいのかなこれ。



せっかく姉の届け物を持ってきたというのに、

この警備員の男の人のせいで中に入れず入口で立ち往生しているこの状況にはあ、とため息をつく。



何度姉の名前を出しても、忘れ物を届けに来ただけと紙袋を出しても首を縦に振ることもせずに、かれこれ10分は格闘していた。


……なんでこんな時にメール見ないの、いつもならすぐ返事くるくせに。

何度メールで荷物を届けに来たから外に出てきてと連絡しても無反応。



「君、いい加減にしないとそろそろ警察に……」



しぶといあたしに限界を迎えた警備員が警察に電話しようとスマホを取り出してきた。



……まずい、このままじゃ警察行きになってしまう。



それはまずいでしょさすがに。

警察沙汰なんてごめんだ。



ここは一旦引いて姉からの連絡が返ってくるのを待つしか……



「……あれ、紬玖(つぐ)?」


「……っ、」



え、この声……

声のした後ろをぐるりと向く。



「紬玖、こんなところでなにしてるんだ?」



聞きなれた低い声。

見慣れた整った顔。

あたしを見て不思議そうに首を傾げ、質問をしてくる。



そんな彼を見て安心するあたし。



ん!、とこの声の持ち主に紙袋を見せる。


するとあたしが何故ここにいるのかを察したのか、彼は「そういう事か」と苦笑いした。



「警備員さん、この子知り合いなんだけど通してやってくれない?」



「まあ、燿(よう)さんが言うなら……」



と、すんなり入口を開けてくれた。



「紬玖、入りな」と、入口を空けあたしを先に建物の中に入れてくれたこの男は久我燿。



親同士が知り合いで家族ぐるみで昔から仲が良く、幼い頃から可愛がってもらっている。

あたしの2つ上の兄的存在だ。



そんな兄的存在の燿はあたしの用事がなんなのか分かっているようで、「紬玖、こっち」と手招きして案内してくれるようだ。



「……おい、燿」



「この可愛い子ちゃんは誰?」



燿と一緒にいた男2人組があたしを指差してそう聞いてきた。



……そういえばずっと燿しか見えてなかったけど、ずっと燿の近くにいたっけ。



警察呼ばれそうになりかなりテンパっていて周りが見えていなかったあたしはここで改めて2人組と燿が一緒にいたことに気付いた。