「あ、雑誌の表紙エマじゃん!」


「本当エマって美人よね。しかも演技が上手いとか反則じゃない?」


「やっぱ才能ってやつ?」


「もう少しあたしも顔が良ければモデル出来たのに〜!」


「あんたじゃ無理無理!」


学校を出てコンビニの入口を通った際に聞こえたそんな言葉に嘲笑う。


芸能界とはそんなに甘くはない。

一時のみ売れるだけで生き残ることは出来ずに名前も消えていく。


『弱肉強食の世界』


そう例えるのが正しい。

きっと、一度顔が広まればそれなりに売れても結局そこ止まり。


そこからどこまで這い上がれるかがきっと常時話題となる人物として芸能界に生き残れるかが決まる。


……あたしは思う。

芸能界という世界で生き抜くためにはそれ相応の才能と努力が必要なのだと。



でも結局その努力は世間には見られることは無く、
"天才"、"才能"という言葉で片付けられてしまう。


結局売れなくなってきたら歌を出してみたり、性格やキャラ変更してみたり……そうやって別の道を探して必死に食らいつかねば生きていけない。


生き続けなければ意味が無い世界……それが芸能界。



それなのにありもしない噂話をされ勝手にイメージダウンし、事実とは関係なくとも謝罪をせねばならない。



多くの人間がキラキラした世界と見る世間の一般人は言いたい放題なのだ。



それでも世の中の数多くの人間は煌びやかな世界に憧れ続けるんだろう。



……そんなこと考えたってあたしには関係の無いことだけど。



そんなことを考えていたらあっという間に家に着き、鍵を差し込み玄関の扉を開ける。



荷物は……っと、これかな?



玄関の隅にぽつんと置かれた紙袋を手に取る。



……さすがに制服で行くのはやめておいた方がいいかも


その袋を再び床に置き自分の部屋へ向かい、制服から私服へとすばやく着替える。



持ち物は荷物届けに行ったらすぐ帰ってくるし、スマホと財布だけでいい……よね?



特に何か持っていかなくちゃ行けないものは無いし、手ぶらでも大丈夫だろう。



スマホと財布だけを持ち、玄関に置いてある荷物を持って再び外へ出た。