……っは?え、……え?

ちょ、っと待って、

なんであたし抱きしめられてるの……?



慌てて離れようとするも、力強く抱きしめられているあたしは何も抵抗できず。


それを見てるはずのスタッフも撮影を続けているのか静かなまま。



「まだ終わってねぇから動くなよ」



「……っ、」



み、みみ……!耳がっ!くすぐったい!

近い……近いです、凪玖さん……っ


なんて、そんな声も出せるわけなく固まるあたし。



「音楽が嫌いつったよな?」



誰にも聞こえない、あたしにだけ聞こえる小さな声で。


抱きしめたままそっと話し始めた凪玖に固まるあたし。



「言わせてやるよ、音楽が好きって」



……何を、言ってるのこの男は。



やがて抱きしめられていた腕が緩み、頬に手を添えられ自然と凪玖と目が合うように顔をあげさせられて。


挑戦するかのように、口角を上げふっと笑った凪玖にあたしは目を開いて驚くことしかできなくて。



……言わせる?あたしに……?

音楽が好き、って?



「俺の作った曲で絶対好きって言わせてやるから覚悟しとけ」



「……っ、」



ぶわぁっと一気に顔が熱くなっていく。



なに、それ……

こんなの聞いてない。


音楽を好きにさせる、ってなんなの……?

あたしの事情なんて知らないくせに、そんな事無理に決まってる。


なんであたしが音楽が嫌いなのか知らないくせに。



なんて彼にいってもそんなのはどうでもよくて、ただあたしの口から音楽が好きだと言わせたい……ただそれだけなんだろう。



それに、今日初めて会った人にそんなこと言うなんて何を考えてるの?

そんな思いも知る由もない彼は、堂々宣言した。



「カット!はい、OKです!お疲れ様でした!」



スタッフさんの声ではっと我に返った時には凪玖は既にあたしから離れていて、

表情もいつも通り真顔に戻っている。



……なんだったの、今の。ただの冗談?演出?

それとも、本音……?



本音だとしても、あたしは……、



「言っとくけど、さっきの言葉冗談じゃねえから」



「……っ!?」



「必ず言わせてやるよ、俺の曲が好きだってな」




は、い……?

ちょっと待ってよ。なんか勘違いしてない……?


あたしは音楽が嫌いとは言ったけど凪玖の歌が嫌いなんて一言も……



「音楽も、俺の曲も。……ちゃんとこれから見ろよ、紬玖」



そう言ってその場を離れていった。