やがて音楽がストップし、一旦休憩入ります!というスタッフさんの声が聞こえたと同時にあたしの手を取りOverの元へと向かうお姉ちゃん。



「燿!」



「妃茉、来てたのか」



お姉ちゃんを見て柔らかい顔をして話しかける燿。



「あたしの方が先に仕事終わったから迎えに来てあげたのよ!」



「へいへい、そりゃどーも。もう少しで終わるから待ってろよ…………って、は?」



お姉ちゃんの後ろにいたあたしを見つけバチッと目が合うと顎が外れそうになるくらい口を開けた燿。



「あ、エマじゃんおつかれ〜……って、誰?その子」



燿に続き、休憩しに来た瑞希があたしを指さしてそう聞いてきたのだ。



「ちょ、……おいまて、なんで前髪……っ」



「まあまあ、落ち着けって」



慌てる燿をペシっと叩く瑞希



「そうよ、落ち着きなさい」



それに便乗して叩くお姉ちゃんに「いってえな、なぐんなよ妃茉!」と怒っていた。



「で、この子誰?すっごい美人だね」



「は?何言ってんだよ、さっき会っただろうが」



「さっきこんな可愛い子ちゃんと会ったっけ?

俺、そういうの記憶力はいいほうなんだけど……」



「まあ、無理もねえだろ。さっきは前髪でほとんど顔が見えてなかったからな」



「……え、ってことはこの子もしかして、」



「紬玖」



「……っ、はあ?え、嘘ついてないよね、燿」



「こんな嘘つくわけねえだろ」



まあ、さっきはいつも通りの格好……だったし。


見違えるくらい別人に見えるのは分かる。

だってあたしですら驚愕するくらい別人に見えたんだもの。



「おい、お前ら何してんの


……っ、」



ぎゃあぎゃあ騒ぐ燿たちを見てこちらへ来たのは、凪玖。



「おう、妃茉と紬玖が来たから相手して……ってどうした凪玖?」




あたしと目が合った途端、固まってしまった凪玖。


燿が目の前で手を振っても動かず、ひたすらあたしを見つめる。



「……いや、なんでもねえよ」



燿の声で正気に戻り、ふいっと目を逸らされてしまった。



「いやいや、驚いた。

まさかさっきの子が前髪上げただけでこんなに変わるとはねえ〜」



「何よ、紬玖はあげないわよ瑞希。

あたしの妹に手出したらその無駄に整ってる顔ボコボコにするわよ?」



「おー、怖っ!」



と、瑞希はお姉ちゃんから逃げるように別の場所へと逃げていったのだった。