唐突に叫んだ私に、葛城くんはますます疑いの目を向ける。
私は冷や汗ダラッダラだ。
仏の笑みを浮かべた楓くんが間に割って入ってくれた。
「まあまあ、細かいことは気にしないで。僕たち今日から寮に戻るんだから」
楓くん、神様、救世主!
「戻る? そうか、改修工事とかなんとか……。でも俺も寮だけど、さっき見たとき直った感じはしてなかったぞ? むしろ、悪化してたような」
「そんなの、葛城の見間違いでしょ。それよりぃ、僕たちに言うことあるんじゃなぁい?」
ミケくんがにやにやしながら葛城くんの肩をポンッとたたく。
葛城くんは「は?」と急にどぎまぎしだした。
「ねえよ、そんなの。ただ……」
「ただぁ?」
「……悪かったよ」
葛城くんはそう小さくつぶやくと、この場から逃げるように足早に校舎へと向かっていった。
私たちは顔を見合わせて少し笑う。
「まあ、僕は許してやらなくもないけどぉ」
「あの人も素直じゃないですね」
「はー。ずっと怒ってるのもめんどくさくなってきた。相変わらず腹は立つけど」
「俺っち、前みたいにまた仲良くなりたいな。友達に戻れるかな?」
「そうだね。僕たちならきっと大丈夫だよ」
ミケくん、紫苑くん、天くん、わん太くん、楓くん。みんなの顔がまた笑顔に戻ってる。
「よかったね!」
私は皆に向かってほほ笑んだ。
やっぱり、男子たちには笑顔が一番だ。


