「さくらちゃん? どうしたの?」
前を歩いていた楓くんが心配そうに振り向く。
「う、ううん。なんでもない」
私はごまかすように速足で歩きだした。
今は最後の日を楽しまなくちゃ。
男子たちだっていつも通り過ごしてるんだし、私もいつも通り今日という一日を終える。
それが私たちの在り方だから。
桜ロードまでいつものように歩いて門をくぐろうとしたところ、
「あ、葛城」
私の前を歩いていた天くんが急に立ち止まった。
「うぐっ」
私の鼻が天くんの背中に思いっきりぶつかる。
いてててて……。
天くんが私を振り返って不審そうな顔をする。
違うってば! あたったのは私のせいじゃなくて、天くんのせいだから!
私は負けじとプクッと頬を膨らませた。
その様子を天くんの肩越しに見ているのは、通学バックを持って怪訝そうな顔をした、葛城くんだ。
「お前ら、いつも一緒にいるんだな」
葛城くんは男子たちを見回した後、私に目を止めて眉を寄せた。
「そういや、お前ら寮追い出されてんのに、どっから通ってるんだ? もしかしてどっかに居候とか……」
「うわあああああっ」
それは禁句! 絶対に誰にもバレちゃいけないやつ!
バレたら大変なことになっちゃうんだから!


