後半戦も接戦だった。
上級生だって同級生だって、素人の私にはプロの人たちとは違いがわからないくらい上手かった。
だけど、あの天くんの得点から誰もゴールを決めることができないで、またピィッと笛の音が鳴った。
「タイムアップ!」
監督の声が響く。
試合が終わった! 1対0で白チームの勝ちだ!
葵とあさひなちゃんとの三人で思わずハイタッチをする。
レギュラーがかかったこの試合、男子たちの勝ちだよ!
フィールド上に立っていた紫苑くんは、ほっとしたのか力がなくなったかのように、へたっと座り込んだ。
その周りに、嬉しくてぴょんぴょん飛び跳ねるわん太くんやガッツポーズをした天くんたちが自然と集まってくる。
「やったあ! 僕たち勝てたよ!」
「やったな」
「みんな、お疲れ」
楓くんは汗をぬぐいながら微笑む。
紫苑くんは楓くんに手伝ってもらいながら、ゆっくりと立ち上がる。
「本当に疲れましたよ、この1か月。私、もう動けません」
「しおしお、何もしてないじゃぁん」
ミケくんが茶化すように言う。
「なんということを言うんですか! 練習の合間にみなさんの台本をですね……」
「あっ、ほら、あそこにさくっちたちがいるよ~!」
紫苑くんの声を遮るようにしてわん太くんが大声を出した。
その言葉に天くんが振り向いて、一瞬でぎょっとした顔をする。
「なっ、なんで姉ちゃんがいるんだよ‼」
天くんが叫んであさひなちゃんを指さす。
部員も観客もいっせいにあさひなちゃんのほうに向いた。
ああっ、今までみんな気づいてなかったのに、いきなりそんなこと言ったら!
「ええっ、あさひなちゃん⁉ 最近、学校であんまり見なかったのに」
「結構レア~。近く行ってみようよ」
「俺、サインほしい!」
まずい、と焦ると同時に、観客たちが一斉にあさひなちゃんの周りにやってきた!
あさひなちゃんは超人気なタレントなんだから、みんなサインもらいに行くに決まってるよ~!
一瞬であさひなちゃんが見えなくなるくらいの、人だかりができちゃった!
「あれ、俺まずいことしたかな」
フィールドの中。
天くんが目をぱちくりさせてぽつりとつぶやいた。


