「やあ、君たち。私と一緒に出かけないかい?」

「え、ええ……?」

 紫苑くんが近くでしゃべっていた女子たちに話しかけてる。

 ほかの男子たちは何も見なかったかのように、知らんぷりで通り過ぎようとする。

 もう、ツッコむ気力すらないよ!

 しゃべりかけられた女子だって、ちょっと引いてるし!


 朝ごはんを食べた後、なぜだかみんなで登校することになってしまった。

 男子たちを連れて六人で学校まで歩いてるってわけなんだけど。

 わん太くんはお店の前を通るたびに「あの服かっこいい!」「あれ、おいしそ~」とか言ってあちこちに行っちゃって、全然ついてきてくれないし。

 眠そうなミケくんは、うつらうつらしながらマイ・クッションを抱いていて、たまに急に立ち止まってそのまま寝ちゃうし!(ちなみに二人は家を出る五分前に、天くんと楓くんにたたき起こされた)

 それに、紫苑くんはずっとこの調子だ。同世代の子でも年上の人でも、だれかれ構わず会う人に話しかけまくっている。

 はああ、なんなの! この人たち!

 協調性ゼロゼロ人間だ!

「君たち、同じ学校かな? 私の顔に興味はないかい?」

 紫苑くんが、今度は野茨の制服を着た女子五人組に話しかけ始めた!

 ああ、もう!

「学校終わったら暇なんだけど、一緒に……」

「ほら、紫苑くん行くよ!」

 しゃべり終わらないうちに彼のブレザーの裾をつかんで引っ張った。

 されるがままに引きずられる紫苑くんはムッと顔をしかめる。

「なんです、さくらさん。君には興味はないですよ」

「私から結構です!」

 興味あってたまるか!

 紫苑くんを連れていくついでに、宝石店のショーウィンドウにへばりついていたわん太くんも捕まえる。

「うわあ。さくっち、積極的~」

 ひゃあとうれしそうなはしゃぎ声を出しながらおとなしくついてきた。

「わん太。なんだよ、さくっち、って」

 天くんが眉を寄せてわん太くんの方に振り向く。

「え~、さくらのあだ名だよ。今考えた!」

「あははっ、いいね。桜が咲くみたいで」

 楓くんはおかしそうにクスッと笑った。

 わん太くんはまるでおやつをもらったトイのようにキラキラと目を輝かせる。

「でしょでしょっ。みんなのも今考えようよっ」

 手始めにわん太くんは紫苑くんの肩をつかんで、じぃーっと眺め始めた。