紫苑くんは足を使ってうまくボールを受け取って、そのままドリブルしていく。
紫苑くんの周りはミケくんと比べて人が少ない。
これなら一気にゴールに近づくことができる!
ゴールの近くでは先を見越した天くんがスタンバイしていた。
紫苑くんは走りながら位置を確認すると、すぅと息を吸う。
「天、やっちゃってください!」
彼の声がフィールド中に響き渡った。
カーブを描いて飛んできたボールを天くんは胸でキャッチする。
だけど、すぐ近くには葛城くんが迫ってきてる!
天くんは必死な顔で彼をよける。
「お前には絶対負けねえ!」
そう叫ぶと狙いを定めて勢いよくボールを蹴った!
ドコンッ
激しい音がしてサッカーゴールの網が揺れる。
相手チームのゴールキーパーがあ然とした顔で突っ立っている。
その横には跳ね返ってコロコロ転がるボール。
わあっと歓声が上がった。
私はあさひなちゃんと顔を見合わせる。
天くんがゴールした! 白チームが先制点だよ!
私はぱああっと笑顔を浮かべる。
「今のめっちゃ、かっこよかった! ミケくんがイケメンなのはいつもだけど、朝日もやるじゃん!」
葵が興奮して私のほうを振り向く。
そして私の隣に目線を動かしてこてっと首をかしげた。
「え……、あさ、ひなちゃん? え?」
葵ってば、あさひなちゃんに今気づいたの⁉


