前半戦は両チーム無得点のままに終わった。
どっちのチームも何度もゴールしそうになったけど、毎回済んでのところで防がれちゃうの。
さすが野茨が誇るサッカー部だ。
先輩はおろか、同級生たちだって負けないぐらいとっても上手い。
「あの子たち、大丈夫かな。昔はよく試合見に行ってたから、私のことみたいに緊張しちゃうな」
あさひなちゃんは芸能界デビューする前からよく試合に行ってたらしい。
だから男子たちは全員知り合いなんだって。
もっともタレントとしてテレビに出るようになってからは、忙しくて見に行く時間が取れなくなっちゃったみたいだけど。
ミケくんやわん太くんは記憶が薄れちゃってたみたいだけど、紫苑くんが知っていたのはそういうことだったらしい。
もしかしたら、楓くんも最初から知っていたけど、わざと口にしなかっただけ? なのかも。
あさひなちゃんの話を聞いていたら後半戦が始まった。
ピィッとなった笛の音で葵がむくっと起きる。
「あ、起きたね」
あさひなちゃんがポツリと口にした。
が、当の本人は全く聞こえていないのか、フィールドを凝視(主にミケくん)。
その様子にあさひなちゃんはあははっと笑って彼女も前を向きなおした。
後半戦はさっきとは逆の赤チームからキックオフだ。
葛城くんと、今度は楓くんが正面から向き合っている。
するといきなり、葛城くんが思いっきりボールを蹴った!


