……それもつかの間。
「ふぎゃあっ。まぶしい、かっこいい、かわいいよ~!」
ミケくんを直視した葵が手で顔を覆ってバタンッと後ろに倒れた。
「ちょ、ちょっと葵⁉」
こんなとこで制御不能状態になんないでよ~!
ベンチに座ったまま後ろにのけぞる葵。
サッカー部を応援しに来た同級生や上級生たちが、彼女を見てざわついている。
すいません、すいませんっ。
私は申し訳なくて体を縮こませる。
まだプレーは始まってないのにっ。こんなんじゃ、最後までもたないよ!
「?」
ミケくんはきょとんとして首をかしげてる。
そのすきにフィールドの中心に立った監督がコイントスした。
その様子をすぐ近くで見つめているのは白のゼッケンの天くんと、その向かいに立つ赤の葛城くん。
監督は器用にコインをキャッチして、さっと左手を上げる。
さす方向は天くんのほう。つまり白チームが先攻だ。
監督の笛の音が鳴り響いたと同時に天くんがボールを思いっきり蹴った!
ついに始まっちゃったよ‼ レギュラーがかかった正々堂々の一発勝負!


