まだまだ仕事があるからって言う葵と別れて、私たちはグラウンドと校舎への分岐路に立っていた。
私はもうちょっとオープンスク―ルの様子を見に行くから、ここで男子たちとはお別れだ。
私たちが立ち止まると、すれ違いざまに紫苑くんの肩にぶつかった人影があった。
「「あ」」
ぎょっと驚いたような顔を見せたのは葛城くんだ。
彼は私たちがそろっているのを見て気まずそうな顔をする。
「……これから練習なのに何してるんです?」
「教室に忘れもの取りに行ってたんだよ。そしたら、すっごい人で」
あの時のミケくんがよほど意外だったのか、葛城くんの様子がいつもよりおとなしい。
どうやら人ごみに流されているうちにぶつかったようだった。
紫苑くんはともかく、威嚇しているみたいに敵意丸出しで無言の圧をかける男子たちに、葛城くんはひるんでいる。
まあ、しょうがないけれど。
葛城くんは言いにくそうに口を開く。
「俺、聞いた。このオープンスクール、合間ぬってお前らが手伝ったんだって。……言っとくけど、俺手加減しないからな!」
葛城くんはびしっと人差し指を突き立てた。
私はハラハラとしながら見つめるけど、男子たちは顔色一つ変えずに挑戦的な目つきだ。
「望むところだ」
「正々堂々勝負するんだからね!」
天くんとわん太くんも負けじと答えた。
その目には闘志の火が燃えている。
そうだよね。明日の試合は今後のレギュラーが決まる大きな試合であるとともに、葛城くんとも争う試合なんだ。
どっちも負けてはいられないだろう。
「ふん。今からどれだけやっても、どうせ俺に勝てるわけない。目にもの見せてやるよ」
だんだんと普段の調子を取り戻した葛城くんはハハッと鼻で笑う。
余裕そうなその顔に、むむむっとわん太くんはうなった。
あああっ、一触即発の予感!
「そ、そろそろ行かなきゃいけない時間じゃない? 監督に怒られちゃうよ」
間に割り込むようにして仲裁すると、葛城くんは腕時計を見て「それもそうだな」と小さくうなずいた。
「明日、逃げんなよ」
彼はそう言い残してグラウンドへの道を駆けていく。


