「うん、いいんじゃない?」
満足そうにうなずく楓くんに、私たち三人は顔を見合わせる。
じわじわと笑みがこぼれてくる。
嬉しくなってみんなでハイタッチをした。
やったあ! 録画成功だ!
「楓ー、こっちのパソコンに送ってぇ。すぐ編集するぅ」
「了解」
ミケくんと楓くんが二人でやり取りしてる。
とりあえず、ちゃんと撮れたからほっと一安心だ。
と、自分のスマホを手に取りに行った天くんが不意に顔を上げた。
「紫苑。3日前分の動画ってまだ台本考えてないよな」
「時間が足りなかったので5日分しか作ってませんけど。どうかしました?」
「動画、こっちで出来てるから。ミケ編集よろしく」
天くんの衝撃発言に私たちは目が真ん丸だ。
ええええ⁉ もう出来てるってどういうこと!
天くんがスマホの画面を見せてくれる。
みんなで顔を寄せ合ってのぞき込むと、そこにはあさひなちゃんの姿が!
『オープンスクールまであと3日! 本日は現在野茨学園に通っている私、あさひながお送りします!』
「えええええ⁉ あさひなちゃん⁉」
な、なんであさひなちゃんが動画を撮ってくれてるの! しかも天くんが持ってる⁉
「へえ。確かにあさひなさんなら人気がありますし注目が集まりますね」
紫苑くんが感心したようにうなずく。
いやいやいや、感心してる場合じゃないよ!
もっと驚いてよ!
「あ、思い出した!」
動画を見てわん太くんが思いっきり叫んだ。
「俺っち、会ったことある! あさひなちゃんって、サボテンのね……むぐむぐむぐっ」
わん太くんの口を天くんがふさぐ。
あさひなちゃんが、天くんの何?
天くんは焦った顔をしている。
「ただ、ちょっとしたツテがあっただけだよ! 頼んでみたらやってくれるって」
ええ、頼んだらやってくれるものなの?
天くんはごまかすようにコホンと咳をする。
ミケくんはぽかんとしてそのまま動かなくなっちゃった。
まあ、私の推しが見れるなら、うれしいからいっか……?
どこからともなく現れたトイが「わんっ」と嬉しそうに吠えた。


