うちの訳アリ男子たちがすみません!


「それじゃあ、行くよ。よーい、スタート!」

 楓くんがタブレットのカメラを私たちに向ける。

 その横では監督気取りに台本を持ちながら腕を組む紫苑くん。

 ううっ、緊張するよ!

 私の前でわん太くんが動く。

「みんなこんにちは! わん太だよっ。難波わん太はナンバーワン! 今日から俺っちたちが紹介するのは野茨学園のオープンスクール! そうだよね、サボテン」

「えーっと、入試説明会や学校ツアーを始め、いばらちゃんとの触れ合いもできるなんて、タノシソウダナ
ー。ゼヒ、イッテミタイナー」

 その横で天くんが棒読みの演技を繰り広げる。

「カット、カーット!」

 たまらず、紫苑くんが間に割って入った。

「なんなんですか、この演技は! もっと感情込めてくださいよ! それにワン! 個人情報は言っちゃいけないと先生に言われているでしょう。大体、台本にないです!」

 わん太くんはいたずらっ子な顔をして「えへ」と頭をかいた。

 だめだ、こりゃ。

 楓くんは苦笑いしてタブレットを下ろす。

「ってか俺、ミケの手伝いするんじゃなかったのかよ。演技なんか無理だぜ」

 天くんはうーんと伸びをする。

 さっきからずっとこの調子なんだ。

 学校が終わってみんなのサッカーの練習が終わった後のすき間時間に、私たちはさっそく撮影を始めた。

 今日撮る動画は十日前のカウントダウン。


 なんだけど……冒頭の五秒だけをもう十回(・・)は繰り返してる。


 私もこの後出番があるんだけど、一向に回ってこないんだ。

 緊張するし、ずっと立ってるのもちょっと疲れちゃったよ~。

 ミケくんはパソコンを前に頬杖をついて面白そうに私たちを眺めている。

「仕方ないでしょサボテン。僕たち人数少ないんだからぁ。みんなでローテーションして撮るのぉ」