「さくらさんは知らないですよね。あの猫はサッカーとゲームに関しては目がないんです。ゲーム機使ったりパソコン使ったり。いつも同じ部屋で寝てますけど深夜も遊ぶもんだからうるさくて仕方がない」
彼はテーブルの上に肘を置いてあごをのせる。
なるほど。ミケくんがいつも眠そうな理由はそれだったのか。
「まあ、いつも通りだったんでいいんじゃないんですか。問題は天とわん太ですよ」
天くんとわん太くんは早々に部屋に入ってしまったらしい。
声をかけてもあんまり返事をしてくれないみたい。
長年の仲の紫苑くんたちでもダメなら私はもっとダメだろう。
いったいどうすればいいんだろう……。
悲しくなって、遊んだ日の動画を見返す。
あさひなちゃんのコラボでインフルエンサーみたいな撮影体験をした動画。
思い出に残そうと思ってスマホに保存しておいたんだ。
カクカクと動く天くんと、テンション低めにワンテンポ遅れて踊る紫苑くんを先頭に、後ろではわん太くんが楽しそうに跳ねている。
グダグダだった最後だけど、みんなとびっきりの笑顔でピースしたところで動画は終わった。
よかった。ギリギリ間に合ってたみたい。
ピロンとスマホから通知音が鳴る。
「なんです?」
「ええっと……あ、あさひなちゃんの新しい投稿だって」
あさひなちゃん関連のSNSに投稿がされたら通知されるように設定してあるんだ。
紫苑くんは「へー」と興味なさそうな声を出す。
もう、自分で聞いたくせに!
SNSのサイトを開くとすぐに動画が流れ始めた。
『映画公開まであと七日! 今日からカウントダウンしていくよ! 今日は映画のあらすじをご紹介!』
あさひなちゃんが軽快な音楽をバックに、出演する映画について説明している。
音楽や映像があるから文字だけよりいろんなことが伝わってくる。
楓くんが肩を寄せてのぞき込んできた。
「カウントダウン動画か。映画あるって言ってたもんね」
私たちも体験したエフェクトを使って動画がかわいくなっていた。
あさひなちゃんのかわいさがより一層引き立つ。
いいなあ。動画自体も短いからわかりやすい。
野茨学園のSNSもこんな感じに親しみやすかったらいいのになー。
必要事項を書いた、ただの連絡じゃなくて。
そこまで思ってハッとした。
オープンスクールの宣伝に動画を作ったらいいんじゃない⁉
この動画みたいに、魅力を伝えられれば!
たくさんの人に来てもらえるかも!
でも……私ひとりじゃ、動画を撮れないし編集だってやり方が分からない。
これは手を借りるしかない!


