「野茨の人が突然来て、何人かスカウトしたいからぜひ推薦を受けてほしいって言われて。クラブのみんなで喜んでたんだ。特に翔はちょうど野茨を目指してたみたいで、一番うまかったし受かるのは確実だって思ってた」
なんとなく、わかってきた気がする。
葛城くんは野茨を目指して塾にまで通ってた時に、推薦という絶好のチャンスが来た。
だけど、それに受かったのはここにいる男子たちだ。
ということは。
「僕たちもみんなに追いつけるようにたくさん練習したんだ。そしたら監督が僕たちにも推薦を勧めてくれて。だんだんとできることが増えていって、試合にも出られるようになったんだ。だけどそのことを翔はよく思わなかったみたい。
ちょっと前までクラブののこりもので、役立たずだったのにって、けんかになることが多くなった」
「うん……」
私はあいづちを打つことしかできない。
彼の横顔はなんだかさみしげに見えた。
友達だった葛城くんとすれちがってすごく苦しかっただろうな。
私だって葵が変わらずずっといてくれるから毎日楽しく学校に通えてる。
葵が突然私から離れてしまったら、どれだけさみしくて心細いだろうか。
なのにそんな素振りを全く見せずに男子たちは今日まで来た。
本当はしんどかったはずなのに……。


