え?
私は驚いてそのまま固まった。
本当のことって……。みんなはズルして入学してきたって言うの?
今までずっと、うそをついてたって言うの?
私はゴクッと息をのむ。
「それは、どういうこと?」
「……全部話すよ。さくらちゃんには知っておいてほしいから」
楓くんは緊張しているようなこわばった顔をしている。
すうーと深呼吸をすると彼はゆっくりと口を開いた。
「僕たちがもともといたのは地域のサッカークラブだって言ったでしょ? 翔もそのメンバーだったんだよ。あの時はすごく仲良く
て、翔はサッカーがうまかったからよく教えてもらってた」
あの葛城くんと男子たちは仲が良かった。
今では考えられないようなことだ。
「僕たち下手だったんだよ。翔も言ってたでしょ、補欠にも入れないようなのこりものって。あれは本当だよ。いくら練習しても監督
に怒られてばっかりの僕たちに対して、翔は私立中学を目指して塾に行きながらサッカーしてたんだ。すごいって、ずっと思ってた。
でも六年に上がってから変わっちゃったんだよ」
ここで楓くんは声を落とす。
膝の上でぎゅっと自分の手を握っていた。
こんな楓くんは初めて見た。
言いにくそうな、つらそうな顔。
私も苦しくなって、もう言わなくていいって止めてあげたくなったけど、ぐっと押しとどまった。
きっと、それは楓くんにとっていいことじゃない。
楓くんが勇気を持って言ってくれているなら、私もしっかり聞く。
それが今の私にできる一番のことだ。


