「葛城のこと、知ってたのか?」
天くんが振り返って聞いてきた。
「……その、廊下で話してるの聞いちゃって。それがバレてたんだと思う」
「俺たちのことか」
天くんがはあとため息をつく。
その目はまだ力が入っていて、怒りが収まっていないような感じだった。
張りつめた空気がただよう。
楓くんは少しだけ目を見開いて私に聞いた。
「どうして僕たちに言わなかったの?」
「言えないよ、そんなこと」
男子たちが苦しんでいるかもしれないならなおさらだ。
私はできることなら守りたかった。
今日だって最後まで楽しんでほしかったのに。
すると今まで黙っていたわん太くんが静かに口を開いた。
「俺っち、悔しいよ。さくっちまで巻き込んで。
……もう、黙ってられない」
彼のこぶしはわなわなと震えている。
さっと顔を上げると楓くんたちを見すえた。
「……わん太」
「言われたままじゃいやだよ! 俺っちたち、何もしてないのに!」
わん太くんの目には涙が浮かんでいる。
「なんでみんなは平気なの⁉」
「平気なわけじゃねえよ! 俺だっていやだ。このままじっとなんかしてられない!」
天くんが痛そうな声で叫ぶ。
楓くんが焦ったように二人の間に割って入った。
「ちょっと待ってよ。僕たちが今動いたって、もっと厄介なことになるだけだ。ここはおとなしくしておいて……」
「これ以上黙ってろって言うのか? 悪いけど俺はわん太と同じ側だ」
「天……」
もう我慢できないわん太くんと天くん、慎重に行きたい楓くん。
どちらも譲れない様子で相対している。


