「こここ困るよ! いきなりそんなこと言われても!」
「大丈夫よ、悪い子たちじゃないわ。それに、屋根が直るまでの一か月だけよ」
お母さんの言葉に、そうなの? と言葉に詰まる。
一か月。ってことは五月になったらいなくなるってことか。
それなら、悪くない……? かも。
三十日間、耐えればいいんだ。別に同じ家にいるだけだし、接しなければ今まで通りの生活だし?
「よろしくね、さくらちゃん。僕は久宝寺楓。楓って呼んでくれると嬉しいな」
口を開いたのは背の高い男子だ。楓くんは目を細めてにこっと笑った。
その横で小柄な男子がフードを取って顔を見せる。
「俺っち、難波わん太! 難波わん太はナンバーワン! よろしくねっ」
わん太くんは目を輝かせながら、シャキッと目の横でピースサインをして決めポーズ。
な、なんだ?
あっけにとられていると長髪の男子が髪の毛を耳にかけた。
「私は八尾紫苑。……君の顔じゃ、私の美貌に勝てませんね」
さらっと毒を吐くと、紫苑くんはポケットから鏡を取り出して、何やら自分の顔をうっとりと眺め始めた。
「ああ、今日も私の顔は美しい……!」
なななな⁉ 今、初対面で侮辱されたんですけど!
私だって、あさひなちゃんのように顔が整ってるわけでもないし、可愛いわけでもないのはわかってるけど!
そんなこと、初めて会った人に言われたくなーーーい!


