「うふふ」
わん太くんと一緒に、私も手で口を押えながら小さく笑う。
そんな私たちを紫苑くんはギロッとにらんだ。
「なにか問題あります?」
「「な、なんでもナイヨー」」
私たちはさっと顔を背ける。
スクリーンではあさひなちゃんが最後の説明に入ったところだ。
『最後はみんなでぎゅっと集まって決めポーズ! とびっきりの笑顔を見せてくださいね!』
あさひなちゃんが頬を指さしてにこっと笑う。
ああ、かわいい! まるでおとぎ話に出てくる妖精みたい!
一方で天くんの顔はますます不機嫌になっていった。
最近、あさひなちゃんが出てくるたびに顔にしわが刻まれて行ってる気がする。
いったい何が嫌なんだろう?
「ほらっ、天も来てよ」
楓くんが振り向いて彼に手を振る。
見かねたミケくんがにこにこ……いや、にやにやの笑顔で彼の背中を押した。
「あ、おいっ。俺やんねーって」
「天も一緒にやるのぉ。拒否権はありませーん」
天くんが焦ったような顔をする。
紫苑くんは達観した目で彼を見つめた。
「あきらめたほうがいいですよ。ここはおとなしく従っておきましょう」
『それでは本番です! 撮影開始まで、3・2・1!』
天くんが前に連れてこられたと同時にスクリーンでカウントダウンが始まる。
音楽が始まって、スクリーンに映し出される自分の姿を見ながらさっき覚えたばかりのダンスを踊る。
ハート、ひらひら、足はこうで……。
コツッと天くんとひじが当たった。
ちらっと目が合う。


