「あ、いたいた! しおしお~、さくっち~」

 ちょうどそのタイミングで、コースターから帰ってきたわん太くんが駆けてくる。

 が、あとちょっとのところでつまずいて、そのまま地面へダイブ!

「いたたたた」

「……何やってるんですか」

 紫苑くんはいつもの顔に戻って呆れたようにつぶやいた。

 ふふ、素直じゃないなあ。

 思わずにこにこしていると、彼にじぃっと目の奥でにらまれた。

 ……おっと。

「ま、待ってよぉ~」

 少し遅れてミケくんと楓くん、天くんもやってくる。

 楓くんはいつも通りさわやかだけど、ミケくんは青ざめて疲弊しきった顔だ。

「あんなにっ、速いなんてっ、聞いてないぃっ。こわかったよぉ」

 マイ・クッションをぎゅっと抱きながら、ゆっくりと歩いて来る。

 そのうち力尽きて、私の隣に倒れこむように座った。

 ミケくんは首を動かして真ん丸の目を私に向けた。


「さくらぁ、僕頑張ったから褒めてぇ?」


「へっ。えーと、よく頑張ったね?」

 よくわからないまま口にすると、ミケくんはぱああっと笑顔になった。

「やったぁ。褒めてくれたぁ。僕、元気出たよ!」

 そ、そうなの? それならよかったけど。

 私は目をぱちくり。

 わん太くんはハハッと朗らかに笑う。

「ミケにゃんはこわがりすぎだよ~。あのスリルが楽しいの!」

「ワンが強すぎるんだよぉ」

 ミケくんは悲しそうな声を出す。

 一方、天くんは風であおられた髪を手ぐしで直しながら、余裕そうな顔だ。

「そろそろ建物の中入ろーぜ。さくらが行きたいとこ、あるんだろ?」

 その言葉に私の気分はぱっと晴れ上がった。

 あさひなちゃんがプロデュースしたアクティビティ!

 私も体験できるなんて!

「よしっ、行こー!」

 さっきとは打って変わって、勢いよく立ち上がると、楓くんはふふっと笑った。