観覧車を下りると、私と紫苑くんはみんなと別れてベンチの方に移動することになった。
ローズコースターは人気だから少し待ち時間があるみたい。
「ドリンク買ってきますよ。何がいいです?」
紫苑くんはいつもの真面目な顔のまま、私に聞いてくる。
「あ、じゃあ、オレンジ……」
紫苑くんは小さくうなずいてショップの方に歩き出す。
紫苑くんって個性強いけど、意外と優しいところあるよなあ。
好き勝手やっているように見えて、実は周りがちゃんと見えてる。
私は鮮やかなピンクに染まったベンチに腰掛けた。
しばらくして紫苑くんは両手に飲み物を持って戻ってきた。
紫苑くんのはアイスティーだって。
紫苑くんはオレンジジュースを渡してくれる。
「ありがとう」
彼は何も言わず、隣に腰を下ろす。
もうすぐ三時になるからか、家族連れの人たちが食べ歩きをしている。
「ゆいも食べるー!」
近くのテラス席では若い男性が、小さい子と一緒に椅子に座っていた。
三歳ぐらいの小さな女の子が笑いながらソフトクリームをほおばるのを見て、思わず微笑んだ。
懐かしいな。私もお母さんとお父さんと一緒によく出かけてた。
周りの人からは私もあんな風に見えていたのかな。
私だけじゃなく、男子たちだって昔は小さかったはずだ。
みんなはどんな子だったんだろう。
今と変わってたりするのかな?
そんなことを考えていると、紫苑くんは不意にぽつりとつぶやいた。
「……なんで君は、あんな人たちと付き合えるんです? 私には理解不能ですよ」
「えっ?」


