楓くんの質問に私はう~んとうなった。
「私も……やめとこうかな」
実は私も、こわいの苦手なんだよね……。
急降下した時の、あのふわっとした感覚。
小学生の時、興味本位で乗ってみたことがあるけど、思ったよりこわくて泣いちゃった記憶がある。
けれど、楓くんはすっと近寄ってくると私の顔を覗き込んできた。
「……さくらちゃん、無理してる? なんだか疲れてそうだけど」
「えっ」
ま、まさか遅くまで起きてたのバレちゃった⁉
楓くんの顔がずいっと寄ってくる。
色素の薄い茶色の瞳が見透かすように私を見つめている。
私は思わず後ろにのけぞって、窓に肩をぶつけた。
「な、なにもないよ! ちょっと歩き疲れちゃっただけ」
みんなもせっかくの息抜きなんだ。心配かけるわけにはいかない。
気を付けないと、と思いながら火照った頬を手で押さえる。
みんなに楽しんでもらいたいし。
楓くんは小さく「そう」と言って、元の姿勢に戻った。
ふう、びっくりしたあ。
楓くんになら、なんでもバレちゃう気がする。
わん太くんたちはそんなこと関係なしに外を見て盛り上がっていた。
「じゃあ、四人で乗ろー!」
「ふえっ」
わん太くんの掛け声に、ミケくんは小さく震えた。


