去年のオープンスクールは私も行った。

 野茨学園の公式マスコット・いばらちゃんがステージショーをしたり、生徒会の先輩と一緒にゲーム大会をしたり。もちろん、しっかりした学校説明会もあった。

 今のままでも、すっごい楽しいイベントなんだけど。

 もっと人を集めなきゃいけないんだよなあ。

 お昼休憩になった瞬間、私は一人うなっていた。

 清水先生が言うには、イベントの方は生徒会が去年と同じように進めてるから、何もしなくていいって。

 つまり、私の仕事は呼び込みだけってことだ。

 去年はお母さんがチラシを持って帰ってきて、私はそれで知ったんだ。

 今年も同じようにチラシを作ればいいのかもしれないけど、それだけじゃ、何か足りない気がする。

 現に、来てくれたのは四百人ほどだって言ってたし。

 でも足りないものが分からないんだよ~!

 男子たちはお昼も練習するみたいで、チャイムと同時に、すでに出て行っちゃってる。

 彼らが頑張ってるなら、私も頑張らないと。

 はああ。とりあえず去年の資料でも先生に頼んでもらってこようかな。

 勢いをつけて席から立ち上がると、ガツンと背中に衝撃が走った。

「……葵!」

 私が体をひねると葵が私に抱きついて、にかっと笑った。

 何も頭から突進してこなくてもっ。

「どーこ行くのっ?」

 葵は悪気ゼロの満面の笑みで聞いてくる。

「職員室かなあ」

 お昼だったら、先生いるだろうし。

 それを聞いた葵は口に手を当ててあからさまに驚いた。

「ええっ、お呼ばれ⁉ 何か悪いことしたの⁉」

 あながち間違いじゃないかもしれないな……。

 私は苦笑いだ。

 葵には特別対応係のことも言えてないんだよね。お母さんにもだ。

 退学なんて言ったら余計な心配させちゃうだろうから。

 葵は何も知らず「心配だから私もついて行く!」とか言う。

 まあいっか。ついて来るくらいなら。

 ぴったりついて来る葵と一緒に廊下に出ると、ちょうど右から走ってきた男子とぶつかりそうになった。

「うわっ」

 鼻の先が当たる寸前で急ブレーキ!

 当の男子は私に気づかずに友達とそのまま通り過ぎる。

「あっぶないなー」