楓くんはまだ納得してない表情だ。
「でもさくらちゃんに負担が大きいよ。僕たちはサッカーの練習に慣れてるから大丈夫だけど」
「だから、その代わり、聞いてほしいことがあるの」
わん太くんは首をかしげる。その隣でも、クーンとトイが不思議そうに鳴く。
だから君たちはシンクロしなくてよろしいっ!
「私たちが一緒に住んでるってこと、誰にも言わないで!」
「……は?」
天くんがすっとんきょうな声をあげた。
「なんだよ、それ」
「私が困るの! クラスメイトにバレたりでもしたら……」
事情を知らない人にとって、私たちの今の状況はおかしいだろう。
そうしたら、私たちは噂の格好の的だ。
何よりも葵が一番騒ぎそう。
平穏な学校生活のためにも(すでに平穏ではないけど!)、トラブルは避けたい!
しばらく黙って思案していた紫苑くんが顔を上げた。
「いいんじゃないですか。さくらさんがこうやって提案してるんですし」
「紫苑……」
紫苑くんは真面目な顔をして楓くんに向き直る。
「私たちはサッカーで野茨に来てます。現状、私たちは十分な実力があるわけではありません。ここでうまくいかなければ、それこそ即退学ですよ」
「それはそうだけど」
「俺も賛成。俺たちはほかのことをやってる余裕ないだろ」
天くんもサッカーボールを片手にうなずいた。
楓くんは不服そうにうーんとうなる。
「……わかったよ。でも、困ったときは相談してね?」
心配そうな顔をする楓くんに、私は親指を突き立てる。
大丈夫大丈夫! 私にお任せを!


