いやいやいやっ、別に教室でなら会えるんだし。
もう一生会えないってわけじゃない。
だけど……みんなはまたサッカー部で忙しくなって学校で話す暇もなくなるんだろうな。
わん太くんがお茶をこぼして大惨事になったり、紫苑くんがあきれ顔でため息をついたり、ミケくんがからかって天くんが憤慨したり、そんなみんなを見て楓くんは微笑んでたり。
全部、一緒に暮らしてたから、そばにいられた。
そんな日常がもう見れなくなるのは、やっぱり……寂しいな。
「ああ、やっぱりまだここにいましたね」
凛とした声とともに、開いたままだったドアから清水先生が入ってくる。
おとなしく黙っている私たちを見て先生は小さく眉を上げた。
「どうしたんですか、元気をなくして」
「いえ……それよりどうしたんですか?」
楓くんが無理やり顔を上げて先生に聞いた。
先生はいぶかしげに、それでも淡々と「みなさんの寮の話ですよ」と切り出す。
「先程、みなさんの保護者にご連絡したのですが。あなたたちの寮、この一か月間改修工事をしていただいていましたが、何やら屋根に引き続き壁に破損が見られたほか、基礎の部分に重大な欠陥が見つかったようで……。
今年度いっぱいは暮らせないようです」
「ってことは、つまり?」
「さくらちゃんの家での居候はこのまま継続するってことだね」
楓くんがぽつりとつぶやく。
うっそお! 本当に⁉
寮がまだ壊れたまま、なんて喜んじゃいけないことなのかもしれないけど、自然と笑みがこぼれてしまう。
だって、これならまだみんなと一緒に!
「まあ、これからも理事長の依頼に応えていただくには好都合でしょう」
「……へ」
先生が続けた言葉に私はあんぐりと口を開けたまま、その場に固まった。
い、今、何ておっしゃいました?
これ……から、も?


