「……なんですか」
「紫苑はしおしお! うん、かわいい!」
紫苑くんは、はあ? と額にしわが寄っていく。
「なんです、その花が枯れたような呼び方は。もっと違うのがあるでしょう!」
「しおしお、そんなに怒らないで~。落ち着く、落ち着く~」
「落ち着いてられませんよ!」
紫苑くんがわん太くんの胸ぐらをつかもうとする。
……が、わん太くんはするりとかわし、紫苑くんの手は宙を切った。
わん太くんはアハハッと無邪気に笑うと、次は楓くんに顔を向けた。
「楓は~、無難に、かえでん、かな」
「あははっ、それは無難なんだ」
楓くんは笑いをこらえきれないのか、肩がフルフルと震えている。
次はミケくんだ。
ミケくんはみんなの騒ぎ声にだんだんと目が覚めてきたのか、目をこすりながら不思議そうにわん太くんの顔を見る。
「ミケは、昼はいつも寝てて夜行性だから、ミケにゃん!」
「……?」
ミケくんは話が分からないのか、こてっと首をかしげるだけだ。
それでも、マイ・クッションはしっかりと右手で抱いている。
「最後は天だね」
楓くんが天くんに目を向けると、彼は不機嫌そうにふんっと鼻を鳴らした。
天くんはなんだろ。
髪の毛はツンツンだし、態度にはとげがあるし。
なんだかまるで、
「サボテンみたい……」
砂漠にひっそりと立つサボテンをイメージして思わず口に出すと、わん太くんはぴょんぴょん飛び跳ねた。
「さくっち、それいい! 天は今日から、サボテンだ!」
「はああああ?」
天くんの口から低音ボイスが飛び出す。
「なんだよ、それ! 撤回しろ!」
「サボテン、サボテン!」
「いいじゃん、サボテン。的を射てると思うよ」
天くんの周りではしゃぐ、わん太くんはともかく、楓くんまでもニヤッと歯を出している。
あ、あれ? 私、悪いことしちゃったかな?
わん太くんと私とを交互にジトッとにらむ天くんに、冷や汗がタラッと流れた。
「じゃあ、お前はわんわんぎゃあぎゃあ騒ぐから、ワン、な!」
仕返しと言わんばかりに、天くんはわん太くんをビシッと指差した。
不敵な笑みを見せ、してやったり、という顔だ。
……ところが、当のわん太くんはパアアッと顔を輝かせる。
「ワン、いいね! 俺っち気に入った~」
「……え?」
天くんは人差し指を出したままのポーズで固まった。


