「……やっぱり、奥さんにこんなふうにされたこと、ないですか」
「……ああ」
崇はそう答えながら、指先を下着の奥へと深く差し入れる。湊の反応は正直だった。びくんと身体を跳ねさせ、押し殺した声が喉の奥から漏れる。
「ふ、ぁ……ん、っ……やば……」
「声、抑えろよ。隣の部屋、薄いんだ」
「……でも、気持ちよくされたら……無理、っす……」
くすりと笑って、崇は湊をソファに押し倒した。小さな吐息がこぼれる。ボタンを外し、ズボンと下着を膝まで引き下ろすと、男の証がぬるついた熱気とともに露わになる。
「……もう、こんなに」
「課長のせいですよ……責任、取ってください」
湊が崇のシャツを引き寄せ、首元に唇を寄せる。襟元に触れる熱に、背筋がぞくりと震えた。焦れたような舌先が、喉仏を這う。
「触ってるだけじゃ……足りない」
崇は答えず、立ち上がると引き出しからローションを取り出した。
「……まさか常備してるとは思わなかった」
「男の一人暮らし舐めるな」
「ふふ……なんか、ちょっと安心しました」
崇は湊の太ももを開かせ、指先にローションを垂らす。とろりとした液体が熱を持ち、湊の入り口へと滑り込む。
「……力、抜けよ」
「うん、……やっ、そこ……っ」
ぬめりの中をなぞると、湊が息を呑む。まだ慣れていない奥のほうを、ゆっくりと押し広げていく。最初は抵抗があったが、じきに身体が馴染み始め、指が中で蠢くたびにぴくりと反応するようになる。
「んっ、ふ、あっ……や、ば……もう……入れて、ほしい、」
「ほんとにいいのか」
「……俺、ずっとこうされるの、望んでた……ずっと前から」
その告白に、崇の心臓が跳ねた。
ベッドへと移動させ、体勢を整える。背後から腰を抱くと、湊の体温がじんわりと伝わってきた。ローションを馴染ませた自身を、入口にあてがう。
「……いくぞ」
「うん……優しく、して」
ゆっくりと押し込んだ。
最初は強く締めつけられたが、湊は苦しそうに息を吐きながらも逃げようとはしなかった。むしろ、自分から腰を動かし、奥へと誘ってくる。
「んっ……は、っ……入って、きて……る……っ」
「……きついな。すげえ、締まる」
「そんな、こと……言われたら……」
完全に奥まで埋めたとき、湊の背中が小さく痙攣した。
ゆっくりと引き抜き、また沈める。そのたびに湿った音が響き、湊の声が途切れ途切れに漏れる。
「気持ち、いい……っ、やば、課長の……奥、当たって、くる……」
「もっと、感じていいぞ。壊れるまで、抱いてやる」
「っ、ほんとに、壊れ、ちゃう、……っ」
熱の渦の中で、理性はどんどんとろけていった。重ねるたび、言葉よりも深く、身体が混ざっていく。
湊が崇の腕を掴みながら、小さく震えて言う。
「中で、出して……理性とか、どうでもいい。
……俺、欲しい、全部」
「……っ、バカ……」
腰の動きが速くなり、奥を突き上げるたびに湊の声が大きくなる。絶頂が近づく気配。崇は自分の限界を感じながら、湊の前を擦り上げ、同時に終わりへと導いていく。
「……もう、イク、っ……いっ、あぁ……っ!」
湊が絶頂に達するのと同時に、崇も彼の奥に果てた。
とろけるような熱の中で、二人はしばらく動けなかった。
やがて、崇は湊の髪を撫でながら、ベッドに寝かせる。
「……後悔するかもしれないぞ」
「……それでも、今日を選びました。俺」
静かに目を閉じた湊の頬を、崇の指がそっとなぞった。
これが、最初の夜。
最初の嘘。そして、もう戻れない始まりだった。
次回予告
第2話「秘密と平常運転」
――あの夜を過ぎても、会社では何事もなかったように接するふたり。
けれど、目が合うたび、記憶が疼く。嘘と秘密が静かに溜まり始める日常。
「……ああ」
崇はそう答えながら、指先を下着の奥へと深く差し入れる。湊の反応は正直だった。びくんと身体を跳ねさせ、押し殺した声が喉の奥から漏れる。
「ふ、ぁ……ん、っ……やば……」
「声、抑えろよ。隣の部屋、薄いんだ」
「……でも、気持ちよくされたら……無理、っす……」
くすりと笑って、崇は湊をソファに押し倒した。小さな吐息がこぼれる。ボタンを外し、ズボンと下着を膝まで引き下ろすと、男の証がぬるついた熱気とともに露わになる。
「……もう、こんなに」
「課長のせいですよ……責任、取ってください」
湊が崇のシャツを引き寄せ、首元に唇を寄せる。襟元に触れる熱に、背筋がぞくりと震えた。焦れたような舌先が、喉仏を這う。
「触ってるだけじゃ……足りない」
崇は答えず、立ち上がると引き出しからローションを取り出した。
「……まさか常備してるとは思わなかった」
「男の一人暮らし舐めるな」
「ふふ……なんか、ちょっと安心しました」
崇は湊の太ももを開かせ、指先にローションを垂らす。とろりとした液体が熱を持ち、湊の入り口へと滑り込む。
「……力、抜けよ」
「うん、……やっ、そこ……っ」
ぬめりの中をなぞると、湊が息を呑む。まだ慣れていない奥のほうを、ゆっくりと押し広げていく。最初は抵抗があったが、じきに身体が馴染み始め、指が中で蠢くたびにぴくりと反応するようになる。
「んっ、ふ、あっ……や、ば……もう……入れて、ほしい、」
「ほんとにいいのか」
「……俺、ずっとこうされるの、望んでた……ずっと前から」
その告白に、崇の心臓が跳ねた。
ベッドへと移動させ、体勢を整える。背後から腰を抱くと、湊の体温がじんわりと伝わってきた。ローションを馴染ませた自身を、入口にあてがう。
「……いくぞ」
「うん……優しく、して」
ゆっくりと押し込んだ。
最初は強く締めつけられたが、湊は苦しそうに息を吐きながらも逃げようとはしなかった。むしろ、自分から腰を動かし、奥へと誘ってくる。
「んっ……は、っ……入って、きて……る……っ」
「……きついな。すげえ、締まる」
「そんな、こと……言われたら……」
完全に奥まで埋めたとき、湊の背中が小さく痙攣した。
ゆっくりと引き抜き、また沈める。そのたびに湿った音が響き、湊の声が途切れ途切れに漏れる。
「気持ち、いい……っ、やば、課長の……奥、当たって、くる……」
「もっと、感じていいぞ。壊れるまで、抱いてやる」
「っ、ほんとに、壊れ、ちゃう、……っ」
熱の渦の中で、理性はどんどんとろけていった。重ねるたび、言葉よりも深く、身体が混ざっていく。
湊が崇の腕を掴みながら、小さく震えて言う。
「中で、出して……理性とか、どうでもいい。
……俺、欲しい、全部」
「……っ、バカ……」
腰の動きが速くなり、奥を突き上げるたびに湊の声が大きくなる。絶頂が近づく気配。崇は自分の限界を感じながら、湊の前を擦り上げ、同時に終わりへと導いていく。
「……もう、イク、っ……いっ、あぁ……っ!」
湊が絶頂に達するのと同時に、崇も彼の奥に果てた。
とろけるような熱の中で、二人はしばらく動けなかった。
やがて、崇は湊の髪を撫でながら、ベッドに寝かせる。
「……後悔するかもしれないぞ」
「……それでも、今日を選びました。俺」
静かに目を閉じた湊の頬を、崇の指がそっとなぞった。
これが、最初の夜。
最初の嘘。そして、もう戻れない始まりだった。
次回予告
第2話「秘密と平常運転」
――あの夜を過ぎても、会社では何事もなかったように接するふたり。
けれど、目が合うたび、記憶が疼く。嘘と秘密が静かに溜まり始める日常。

