「そ、そういえば、友だちが白神さんってすごい仕事に厳しい人だって聞いたって言ってたんですけど」
「心配するな、お前には甘くする」
綾都は沈黙した。
「甘くしていいんだよな?」
……なんだろう。
甘いセリフのはずなのに、脅迫されている感じがする。
だが、そこで、今度は慶紀が沈黙した。
「……しかし、甘くするとは、なにをしたらいいんだろうな」
「さあ?」
二人とも黙り込んだ。
恋愛の経験値が低すぎて思いつかないのだ。
自分たちが静かすぎるせいか、店内で流れているジャズがやけに大きく聞こえてくる。
メニュー