「緊急事態発生、緊急事態発生。ただいま第二開発研究室の端末がサイバー攻撃を受けている。全ての研究員は、非常事態に備えよ」

「ええ? またぁ? この間もあったのよね。ここのセキュリティ、弱すぎるんじゃない?」

 ここ最近、週に1度はサイバー攻撃を受けていた。緊急事態に慣れてしまうほど、サイバー攻撃があるのも考えものだ。そのせいで、第二開発研究室の研究員は寝不足だった。

「秤さん、お願いします」

 同じ研究室のスタッフが、焦った様子で秤さんに声を掛けていた。

「はーい」

「秤さん、私も手伝います」

「でも、この前も手伝って貰ったし。これ以上、他のチームの手を借りるわけには――」

「大丈夫です。アルトがいつもお世話になってますし、北斗さんには私から後で謝ります」

「そう? じゃあ、お願いするわ。今日は、隣の席の人がお休みなの。そこのパソコン使ってもらえる?」

「このパソコンですね? 分かりました」

 私はユーザー切り替えをしてパソコンにログインすると、他の研究員と一緒に、今ある情報のバックアップを始めた。

 ここの研究所は特殊で、バックアップを取っていないのだ。何かあったらどうするのかと思いつつも、それが所長の意向なのだから仕方がない。

「セキュリティ対策Bへ移行します」

「セキュリティ対策Bへ移行」

「「「了解!!」」」

 秤さんが号令を掛けると、研究員が一斉に動き始めた。

「データツー、バックアップ完了しました」

「了解」

「データファイブ、バックアップ完了です」

「了解」

「データ・・・・・・」

 みんなに遅れを取らないように、私もデータをバックアップしていった。

「データイレブン、バックアップ完了しました」

「了解。それでは、セキュリティBへ移行します。小林さんと加藤さんはバックアップしたデータの精査を。それ以外の人は、セキュリティBへ移ってください」

 しばらくして、サイバー攻撃が止んだのが分かった。私達はため息をつくと共に、通常業務へ戻った。

「お疲れ様。巻き込んで悪かったわね」

「いいえ。いつもお世話になりっぱなしですし」

「アルトによろしくね」

「分かりました。お疲れ様です」