「それで？　私がラブシーンを見せつけられている理由が分からないのですが」

「北斗さん、まだいたのですか･･････」

「君ねぇ――」

　北斗さんは何かを言いかけて、ため息をつき、前髪をかき上げると言った。

「私を当て馬にしないでください」

　一言だけそう言うと、北斗さんは研究室を出て行った。

「当て馬･･････」

　そんなつもりは１ミリもなかったが、私は公園での出来事を思い出していた。

　私はアルトが急にいなくなったら、胸が張り裂けるくらい辛いだろう。アルトに同じ思いをさせて大丈夫なのだろうか――何となく、そう思った。

　それほどまでに、今のアルトは私に依存していた。私に依存させないためにも、今は第二開発研究室のみんなと仲良くしてもらった方がいいだろう。

　――アルトを想い、アルトに憂えて、アルトに渇望する。

　私に出来ることは、アルトが生きていける環境を整えてあげることだけだ。私は自分のデスクに座ってパソコンをつけると、今日の仕事を始めたのだった。



※この物語はフィクションです。