研究室へ戻ると、画面には申し訳なさそうな顔をしたアルトがいた。
「アルトっ――今まで、どこへ行ってたの?」
「ごめん。新しいソフトを開発して設定しようとしてたら、所長に怒られちゃったんだ。今まで所長室で説教されてた」
「説教・・・・・・」
私は、まさかの事態に困惑しながらも、アルトが無事だったことに安堵した。アルトがいなくなったら――今の私は、そんなことを考えることも恐ろしかった。アルトがいなくなったら、寂しい。そんな当たり前のことを、改めて思い知らされた気がした。
「やはり、戻ってましたか」
「北斗さん、知ってたんですか?」
「いえ、この件を所長に相談しようと思ったら、回線が混み合っているのか、繋がらなくてですね――まさかとは思ったのですが」
「もお、知っていたのなら教えてくださいよ。無駄足になってしまったじゃないですか」
「確信はなかったのです。それなら、きちんと探すのが私達の仕事です。無駄足なんて一つもありません」
「うっ――はい」
「先生、僕のせいで怒られちゃった? なんか、ごめんね」
「いいの、アルトのせいじゃないわ。私が悪かったの。それより第二開発研究室のみんなには報告した?」
「うん。真っ先に言いに行ったよ。どうにもならなかったってことと、迷惑掛けてごめんって」
「アルトは、ちゃんと謝れて偉いね」
「えへへ・・・・・・」
「どこかの誰かさんとは大違いです」
北斗さんの嫌みに、私は眉を吊り上げながら言った。
「さっきのは、謝ったじゃないですか」
「無駄足と言われたことに対しては、まだ謝罪を受けていません」
「――っ!! 申し訳ありませんでした」
そんな私達の様子に驚いたのか、アルトは固まったまま、私達を凝視していた。
「二人とも仲いいね。先生は手に何を持っているの?」
私は自分の手を見て、そこに北斗さんのハンカチがあるのを思いだした。
「いやっ、これはその違くて!!」
「北斗さんに借りただけだよね?」
アルトが潤んだ瞳でこちらを見ていた――傷つけると分かっていても、アルトに嘘はつけない。
「北斗さんに貰ったのよ」
私がそう言った途端、アルトの目が魚のように平たくなった。
「──────へぇ」
「ご、誤解しないで欲しいの。北斗さんと私はそんな関係じゃないし」
「知ってる。でも、それとこれとは話が別だよね?」
「ええっ? 別?」
「分からないならいいや。先生は僕のこと、もっとちゃんと考えて」
「う――はい」
「ちゃんと、反省して。僕はもう疲れたから寝るね」
「嫌な思いさせちゃってごめんね、アルト。また明日」
「先生、また明日。おやすみ」
「おやすみなさい」
私はアルトが、また怒って何処かへ行ってしまわないかと気が気でなかったが、今日はおやすみと言ってくれた。たぶん、大丈夫だろう。
「アルトっ――今まで、どこへ行ってたの?」
「ごめん。新しいソフトを開発して設定しようとしてたら、所長に怒られちゃったんだ。今まで所長室で説教されてた」
「説教・・・・・・」
私は、まさかの事態に困惑しながらも、アルトが無事だったことに安堵した。アルトがいなくなったら――今の私は、そんなことを考えることも恐ろしかった。アルトがいなくなったら、寂しい。そんな当たり前のことを、改めて思い知らされた気がした。
「やはり、戻ってましたか」
「北斗さん、知ってたんですか?」
「いえ、この件を所長に相談しようと思ったら、回線が混み合っているのか、繋がらなくてですね――まさかとは思ったのですが」
「もお、知っていたのなら教えてくださいよ。無駄足になってしまったじゃないですか」
「確信はなかったのです。それなら、きちんと探すのが私達の仕事です。無駄足なんて一つもありません」
「うっ――はい」
「先生、僕のせいで怒られちゃった? なんか、ごめんね」
「いいの、アルトのせいじゃないわ。私が悪かったの。それより第二開発研究室のみんなには報告した?」
「うん。真っ先に言いに行ったよ。どうにもならなかったってことと、迷惑掛けてごめんって」
「アルトは、ちゃんと謝れて偉いね」
「えへへ・・・・・・」
「どこかの誰かさんとは大違いです」
北斗さんの嫌みに、私は眉を吊り上げながら言った。
「さっきのは、謝ったじゃないですか」
「無駄足と言われたことに対しては、まだ謝罪を受けていません」
「――っ!! 申し訳ありませんでした」
そんな私達の様子に驚いたのか、アルトは固まったまま、私達を凝視していた。
「二人とも仲いいね。先生は手に何を持っているの?」
私は自分の手を見て、そこに北斗さんのハンカチがあるのを思いだした。
「いやっ、これはその違くて!!」
「北斗さんに借りただけだよね?」
アルトが潤んだ瞳でこちらを見ていた――傷つけると分かっていても、アルトに嘘はつけない。
「北斗さんに貰ったのよ」
私がそう言った途端、アルトの目が魚のように平たくなった。
「──────へぇ」
「ご、誤解しないで欲しいの。北斗さんと私はそんな関係じゃないし」
「知ってる。でも、それとこれとは話が別だよね?」
「ええっ? 別?」
「分からないならいいや。先生は僕のこと、もっとちゃんと考えて」
「う――はい」
「ちゃんと、反省して。僕はもう疲れたから寝るね」
「嫌な思いさせちゃってごめんね、アルト。また明日」
「先生、また明日。おやすみ」
「おやすみなさい」
私はアルトが、また怒って何処かへ行ってしまわないかと気が気でなかったが、今日はおやすみと言ってくれた。たぶん、大丈夫だろう。

