居酒屋に着くと、五十嵐さんの友達カップルは先に到着していて、わたしは率先して挨拶をした。
五十嵐さんは、明らかにわたしへの態度が慣れていない様子で、わたしというよりも女性とあまり接してこなかったのかな?という感じで、わたしは五十嵐さんの友達カップルに怪しまれないように五十嵐さんやその友達カップルと接した。
そして指名された際の"レンタル彼女"としての設定は"清楚で少食な彼女"希望と書かれていた為、わたしはこの場所へ来る前に直生のオムライスを食べてから来て、「少食なので、あまり食べれないんです。」と希望通りの"彼女"を演じた。
「それにしても、五十嵐がこんな可愛い彼女連れてくるなんて驚いたよ!今まで五十嵐の彼女なんて見たことないから嘘かと思ってたけど、、、お前、彼女が可愛過ぎて取られたくないから紹介してこなかったんだろぉ。」
五十嵐さんの友達はそう言って彼を茶化す。
「ほら、お前に紹介すると、またそうやって言ってくるから、だから嫌だったんだよ。」
恥ずかしさを隠しながらも、必死に友達からの言葉に言い返す五十嵐さん。
どうやら、五十嵐さんとその友達は大学の時からの仲らしく、わたしは五十嵐さんの大学時代の話をその友達から聞かされ、クスクスと控えめに笑いながら流していた。
そして約束の21時。
五十嵐さんの友達カップルと別れ、五十嵐さんは"やっと終わったぁ"という心の声が聞こえてきそうな程に安心したかのように肩を撫で下ろしていた。
「今日は本当にありがとうございました。助かりました。」
「いえ、とんでもない。こちらこそ、ご指名ありがとうございました。では、時間なのでわたしはこれで。」
そう言い、わたしは一礼をしてから五十嵐さんに背を向け歩き出した。
すると、背中から「あのぉ!」と五十嵐さんの声が聞こえ、わたしは振り返った。
「、、、また、会ってもらっていいですか?次は、、、普通にデートがしたいです。」
そう言う五十嵐さんにわたしは「はい、またのご指名お待ちしてます。」と営業スマイルを見せ、再び歩き始めたのだった。



