第一陣の作業を終え、缶コーヒーを片手にふたりは荷台の端に腰を下ろしていた。
鉄の床に溜まった夜の冷気が、まだじわりと足元に残っている。
「今度の月曜日、休刊日だよね」
直樹が缶を振りながら言った。
「休刊日の前日って、僕たちバイトは休みなんだけど、明日香さんも休み?」
「休みだけど」
「どこか食べに行こうよ。いつもコーヒーごちそうになってるお礼」
「君は、学生なんだし、気にすることないよ」
「それに……明日香さんと、もう少しゆっくり話したいし」
その言葉に、缶を口に運んだ明日香の手が、わずかに止まった。
「この前、トラックの中で話したじゃん」
そう返したが、声に棘はなかった。
「でも、そんなに言うなら付き合うよ」
「ありがとう」
直樹は少し照れたように笑い、缶のふたを指でなぞる。
明日香は缶を置きながら、ふと心のどこかで、自分でも驚くくらいに抵抗がなかったことに気づいていた。
運転手仲間の年上のおじさんたちと食事をすることはたまにあった。
でも、同年代の男と二人きりで食事をするなんて――高校のとき以来かもしれない。
そのことに思い至って、ほんの少しだけ、胸の奥がざわついた。
鉄の床に溜まった夜の冷気が、まだじわりと足元に残っている。
「今度の月曜日、休刊日だよね」
直樹が缶を振りながら言った。
「休刊日の前日って、僕たちバイトは休みなんだけど、明日香さんも休み?」
「休みだけど」
「どこか食べに行こうよ。いつもコーヒーごちそうになってるお礼」
「君は、学生なんだし、気にすることないよ」
「それに……明日香さんと、もう少しゆっくり話したいし」
その言葉に、缶を口に運んだ明日香の手が、わずかに止まった。
「この前、トラックの中で話したじゃん」
そう返したが、声に棘はなかった。
「でも、そんなに言うなら付き合うよ」
「ありがとう」
直樹は少し照れたように笑い、缶のふたを指でなぞる。
明日香は缶を置きながら、ふと心のどこかで、自分でも驚くくらいに抵抗がなかったことに気づいていた。
運転手仲間の年上のおじさんたちと食事をすることはたまにあった。
でも、同年代の男と二人きりで食事をするなんて――高校のとき以来かもしれない。
そのことに思い至って、ほんの少しだけ、胸の奥がざわついた。



