牧は京子の頭をポンと優しく撫でると、
そっと一歩後ろに下がった。
「今日は帰るよ」
「…はい」
「それから…」
京子は顔を上げて、首を傾げた。
「色々と、清算してくるから、待ってて」
久々に見れた、柔らかい微笑みが、
柔らかい声が、そこにはあった。
愛おしそうに目を細めて、
京子を真っすぐに見下ろしている。
そんな熱い視線から目を反らして、
京子はぼそっと呟いた。
「待たない」
クスッと牧が楽しそうに笑う。
何も言わない京子の両肩を持って、
自分の方に向けると、
きちんと目を合わせてくる。
「だめ。待ってて。戻ってくるから」
「…知りません」
今度は、ちゃんと目を見て伝えた。
唇を尖らせる京子の頭を、
牧は愛おし気に撫で、
それから、
「アハッ」
とまた楽しそうに笑った。



