その日、京子はいつになく早く帰路についた。
明日つく手術の情報収集も何一つせず。
もうすぐ夏だというのに、暗くなるのはまだ早い。
かといって、それをたしかめるように、
空を見上げる元気はなかった。
アパートの前でようやく顔を上げて、
目の前の光景に目を疑った。
細長いシルエットが、
草木の生えた塀に寄りかかっている。
「…なにしてるんですか」
あぁ。なんで声掛けちゃったんだろう。
無視すればいいのに。とまたすぐ後悔。
もう一歩近づくと、こちらを向いた牧の顔が、
アパートのエントランスの明かりで照らされた。
「きょんちゃんの本当の気持ちが知りたい。
それを知れたら、帰るから。
もう話しかけたりもしないよ」



