暇な治療院

 10時を過ぎてやっと電話が掛かってきました。 出てみましょうか。
「もしもし、、、。」 「ああ、お宅に要らなくなった物は有りませんか?」
「ああ、俺しか居ないから有りませんよ。」 無愛想にそう言って電話を切ります。
 廃品回収が喜ぶような物は置いてないんですよ。 残念ですねえ。
 のんびりとコーヒーでも飲みながら誰かが来るのを待とうかな。
「来てくれよーーー!」って言うのもなんか恥ずかしいね。
 それにしてもこの町は静かだな。
騒ぐ声も聞こえないし街宣車も走らない。
 そこへまたまた電話が掛かってきましたよ。 誰でしょうね?
「お客さんはお一人ですか?」 「そうですけど何か用ですか?」
「私どもは掃除やなんですけど、、、。」 「ああ、人に頼むほど広くないんで無用です。」
ガチャンと受話器を置く。 静かな静かな部屋の中。
 掃除屋さんか。 あの仕事も大変だよなあ。
ずっと前、働き始めたばかりの頃にもよく掛かってきてた。
 しかもさあ固定電話の番号を変えると必ず掛ってくるんだ。
そしてお互いに、「ああ、またあなたですか。」ってなるんだよなあ。
 しかも先方から「奥様はお出でですか?」って聞いてくるからさあ、「あなたが嫁さんになってくれるんなら居ますけど。」って答えたもんだ。
何とも言えない空気が流れて電話が切れるんだよなあ。

 かと思えば初めて務めた老健と番号が似てたもんだから間違い電話もよく来たよ。
その当時はボイスワープで携帯に飛ばしてたから仕事中にも電話が掛かってきて、、、。
 そのたびにデーの主任を呼んで電話を持って行ってもらうんだ。
そして婦長とかナース、介護の主任と話してもらう。
なんかすごかったなあ。
 昼になりました。 今日も暇ですわ。
そりゃあ開業二日で行列が出来たら驚くわ。
 カップラーメンでも食べるかな。 恐る恐る湯の量を確かめながら出来るのを待ちましょう。
匂いだけはいいんだよなあ。 焼き豚ラーメンが好きかなあ。
カップヌードルも好きだなあ。 シーフードとオーソドックスなあれね。
 子供の頃、ドライブしててラーメンの自販機を見付けると叔父と一緒に食べたっけ。
その叔父も10年前に亡くなって叔母とも会わなくなった。
はーーあ、周りには誰も居ませんですよ。 嫁さんすら居ないの。
誰か来てーーーーー!