極道家の花の姫は最強女総長様

???Side


「___失礼します」

俺は、その女を見た瞬間、目を疑った。
___こんなにも美しい人間が居るのか、と。



転校生が来る。それは事前に昨日のHR(ホームルーム)で伝えられていた。
その時俺は、ただ面倒臭いな、としか思わなかった。

だが今朝、皇牙刹那と女が登校しているのを見て転校生について興味が湧いた。
皇牙刹那と歩いていた女の容姿は遠目ではよく見えなかったが、美しい白銀の髪だけは見えていた。
腰まで伸びた白銀の美しい髪は、屋上から見ても、まるで宝石の様に輝いて見えた。

それ程までに特徴的な髪をしていた為、蛍月学園(ウチ)の生徒では無いこと位すぐに分かった。
だったらつい昨日伝えられた転校生が怪しいと思った。
そうして転校生のことを芽郁と碧葉に調べさせたが、余程厳しいロックが掛かっていたのか全くと言って良い程、情報が出てこなかった。

だからずっとその女の事が頭から離れなかった。
皇牙刹那と共に登校していたこと。
世界ランクのハッカーである芽郁と碧葉ですら解けないロック。
何もかもが不可解だ。だが……そんな疑問が思わず吹き飛びそうになった。
教室中の生徒が皆、絶句している。唯一、皇牙刹那だけは平然とした顔で居たが。

「如月彼岸と言います!これから宜しくお願いします!」

そう言って、其奴は勢いよく頭を下げた。
しん……としている空気の中、皇牙刹那が拍手を始めた。
その音に我に返ったように生徒たちはハッとし、拍手を始めた。
だが、現実を受け入れられないような生徒もチラホラ居た。

___何処までも見透かされそうな、透き通った紅緋色(べにひいろ)の瞳。絹糸のように美しい白銀の髪。
まるで人形の様に白い肌。不安そうに端を下げている桜色の小さな口。完璧なバランスを誇る顔のパーツ。
全てが芸術作品の様に美しかった。
すると、其奴は教師に何か言われたような素振りをした後、おぼつかない足取りで此方へ向かってきた。
チラリ、と隣を見ると誰も座っていない席がった。
そういえば俺の席の隣は空いていたな、とふとした様に思い出した。
すると如月彼岸と名乗った其奴は俺に向き直り、優しい声で俺に話しかけ、小さく会釈した。

「今日から宜しくお願いします……!」

その瞬間、俺は強く思った。



___此奴が欲しい、と。