極道家の花の姫は最強女総長様



橙犂Side

「…………あの、用ってそれだけですか」

「………………嗚呼、」


気まずいな……というか、何だったんだ今までの沈黙は。
…………なんて、如月彼岸(コイツ)が一番思ってる事か。

まさか、あの皇牙刹那に幼馴染が居るとは……その発想はなかったな。
幼馴染か……なら、

「……お前は”Lycoris”の姫じゃなかったのか」

皇牙刹那の隣に居るくらい近しい関係なら姫だと思ったが……

「……は?何言ってるんですか?”Lycoris”に姫は居ませんよ。というか、出来るわけ無いです。」

…………そうなのか?
暴走族で言う”姫”は所謂、総長の恋人だ。暴走族の、それも総長の恋人は良い人質になる。
なぜならその族の弱みとなるからだ。だから、族の連中は是が非でも”姫”を守る。
それに、守るべき存在が居ることでより強くなれる。
だから殆どの族は”姫”が居るが……

”出来るわけがない”、ということは相当な女嫌いなのだろうか?
というかコイツ…………

「お前は、”Lycoris”の総長に合ったことがあるのか」

まぁ……副総長が幼馴染なら無理もないが……

「…………一応」

……歯切れが悪いな。何か隠していることがあるのか……?

総長(あの人)はそうそうフードを取らないんだよ、……ですよ。
それこそ、新人や部外者なんかには顔見せない所か声すら出さない」

そいつは俺の視線を読み取ったように付け足した。あの人、と云うのは”Lycoris”の総長のことだろう。
…………なるほどな、部外者か……副総長の幼馴染ですら部外者なのか……

「で、もう帰って良いの」

「……好きにしろ」

そう云うとソイツはスタスタと歩いていった。それにしても……

「最後に少し、化けの皮が剥がれたな」

猫を被っている……という程でもないが、どうやらあの丁寧な口調は作り物らしい。
ますます興味が湧いてくる。

___嗚呼、同仕様もなく欲しいな。如月彼岸(アイツ)が。



「おーい!橙犂君!!」

……っち、相変わらずうるせぇ……

「……おい志恩、少しは静かに出来ねぇのかよ」

「橙犂君ってば辛辣〜!」

「………………志恩が煩いのが悪いんでしょ……はぁ、転校生も女だし……最悪すぎ」

「まぁまぁ碧葉、機嫌が悪いのは分かりましたからそういうのは心の内に留めてください」

「ははっ!別にいいじゃん!カワイイしさぁ!俺、あの子結構好みなんだよねぇ〜」

相変わらず騒がしい奴らだ……

「…………芽郁」

「……?どうしたんですか、橙犂」

「如月彼岸について調べろ」

「……あの転校生の事ですか?」

…………くそ、こうなるから嫌だったんだ。
志恩も、碧葉も、芽郁も、彪雅も。
……ありえねぇみたいな表情しやがって

「…………橙犂君さぁ、本気(マジ)で言ってる?あの女嫌いの橙犂君が?」

「……あぁ」

「うっそん……ヤバァ……」


彪雅……いつかコイツだけはしばき倒してやる、そう誓った瞬間だった。