帰り道に蓮くんが私よりも前に地蔵さんのことを探していたのを知った。
うわさが広がる前からいろいろ情報を集めてたんだって。
「ごめんね、つけるような真似して。どうやら学校の近くらしいってことは突き止めてたんだけど、確実な場所はわからなくてさ。そ
れに限られた人しか見つけられないなんて話もあったし。そしたら鈴が興味持ってそうだったから」
もしかしたら、蓮くんじゃなくて私なら、見つけられるんじゃないかって思ったらしい。
それでお昼にあんなこと言ってたのかって納得する。
「蓮くんにもそんなに真剣な悩みがあるんですね……」
私は思わずつぶやいた。
情報を集めるなんて、いったいどれだけの人から話を聞いてきたんだろう。きっと自分で何度も探しに行ったはずだし。
蓮くんはそれには答えずにあはっと笑う。
「鈴、僕たちこれから二人で協力しなきゃなんだからさ、敬語いらないんじゃない?」
「えっ」
思いがけない指摘に目を見開くと蓮くんはますます笑った。
「僕たち同級生だよ? 気を使わなくても普通にしてればいいの。ほら、約束ね」
蓮くんが立ち止まって私に向かって小指を立てる。
こ、これって指切りげんまんーってやつだよね?
「は、はい……じゃなくて、うん」
私も小指を出すと蓮くんは自分の指を絡ませた。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーますっ、指切った!」
手を放した蓮くんは満足そうだ。
「二人の約束だからね」
……その晩のお風呂上がり。
自分の部屋に戻ると机の上に一枚の紙が置いてあった。
私の知らない紙。
手に取ってみると、そこには筆で描いたような古風な文字が並んでいた。
なぜだか地蔵さんの顔が頭に浮かんで私は文字に目を走らせた。
『依頼
対象者氏名:葛野春』


