「わしは地蔵じゃ」
「それはわかってるよ。名前だってば。ないの?」
「だーかーらー、わしは地蔵じゃといっておるじゃろう!」
お地蔵さんは鼻息荒くまくしたてる。
ん? え、それって……。
「もしかして、地蔵が名前なんですか?」
私が聞くと、お地蔵さんは人間らしくふんっと鼻から息を漏らした。
「最初っからそう言っておるじゃろう! まったく、人の話を聞かないやつらめ……」
お地蔵さんの名前は地蔵かあ。そのまんまだな。
蓮くんは面白そうに笑う。
「へえ、じゃあ、じぞーさんだね」
彼はわざわざ地蔵さんの名前を強調してニヤッと笑った。
地蔵さんの顔にしわが刻まれてぶすっと不機嫌な顔になる。
「まあ、いい。これで交渉成立じゃ。うるさいから今日はとっとと家へ帰れ」
しっしっと追い払うように手を向けられて私たちは思わず顔を見合わせた。
「仕方ないから、鈴、一緒に帰ろっか」


