すべてを見透かしているかのようなお地蔵さんの言葉に、私はハッと息をのんだ。
そうだ。私、願いをかなえてもらいに、ここまで来たんだ。
お地蔵さんにお願いしないと!
「あ、あの! 私、あなたが願いをかなえてくれるって聞いて来たんですけど! いったいどうしたらかなえてもらえるんですか?」
「ああ、例の出回っているうわさじゃな。残念ながら、願いをかなえるということはわしの力ではできない」
きっぱりと断られて私は絶句した。
そんな! うわさは全部嘘だったってこと?
せっかくここまで来たのに……。
でも、お地蔵さんはちらっと私を一瞥して続けた。
「願いをかなえる、というのはできんが、悩みをなくす、ことはできるぞ」
「えっ」
悩みをなくす……? それって、願いをかなえることと何が違うの?
私は不思議に思って首をかしげる。
「まあ、詳しく説明する前にそこの好青年に出てきてもらおうかの」
お地蔵さんは目を細めて私の肩の向こう、さっき入ってきた路地先を見つめた。
そこにはキャップを深くかぶって顔をうつむけている人影があった。
いつの間に。あの人もお地蔵さんに相談しに来たのかな。
お地蔵さんに呼び掛けられてその人はゆっくりと顔を上げる。
色素の薄い茶色の髪が澄んだ目にかかった。
私はハッと息をのむ。
「蓮くん……」


