私はぼんやりとそんなことを思う。
「ま、ほっとけばそのうち大丈夫になるでしょ。それより、知ってる? お地蔵さんの話」
私の耳がピクッと動いた。
麻里ちゃんは前のめりになりながら、うんうんとうなずく。
「知ってるわよ。なんてったって、その噂でみんな持ち切りじゃない。願いをかなえてくれるなんてロマンがあるわよね」
麻里ちゃんの目がキラキラと輝いている。
朝の、お地蔵さんの話、みんなも知ってるくらい有名なんだ……!
私もほんのちょっと興味がわいた。
麻里ちゃんたちも知ってるなら信憑性があるかも。
だって願いがかなうんだよ?
おとぎ話に出てくるような、夢みたいな話だ。
かなえてくれるなら、私はこんな不運なチカラじゃなくて、幸運になれるチカラが欲しい。
うそだとしてもそのお地蔵さん、見てみたい、かも。
「でも選ばれた人にしか現れないっていううわさもあるよね~。いっぱい探しても会えないって人がいれば、すぐ会えたって人もいるし」
心也くんがご飯を口に運びながら言った。
がーん! じゃあ、めったに会えないの?
それなら、見るだけもむりかあ。
私はがっくりと肩を落とす。
「鈴、興味あるの?」
蓮くんが私の顔を覗き込んで聞いてきた。
私はあわてて顔の前で手をぶんぶん振る。
「そ、そんなっ。ただ本当だったらいいのになって思ったぐらいで」
私、そんなに顔に出てた⁉
恥ずかしくて顔を手で覆った。
蓮くんは「ふーん」と言って少し笑う。
「学校の裏のビルのほうにあるみたいだよ。良ければ行ってみたら?」
「へっ」
ぱっと蓮くんの顔を見る。
今、なんて?
でも蓮くんはもうこっちを向いてはいなくて。
虎井くんが麻里ちゃんとはしゃいでるのを楽しそうに見ている。
「俺だったら、野球上手くなりてーな。急にホームラン打てるようになったら、かっこよくね?」
「そんなに上手くいくわけないでしょ。私だったら宝石が欲しいわね。目指せ、大富豪よ!」
「麻里も結構な夢見てんじゃん……」
心也くんがあきれ顔で苦言を漏らした。
確かに、朝の女の子たちもビルに挟まれてる……なんて言っていたけど、学校の裏って言うのは初めて知
った。
まるで、蓮くんが本当に知ってるような、そんな感じがしたのは気のせいかな。


