あやかしと四神〜闇を祓って〜

「開けるよ」

アカネの言葉にイヅナは頷く。緊張で心臓の鼓動が速くなった。ドアの先には何があるのか。薙刀を握る手に力が入る。

(妖がドアの外にいたら……)

そんな不安を覚えたイヅナだったが、ドアの外には誰もいなかった。ドアと丸いドアの並んだ廊下が続いている。

「誰もいない。よかった……」

安堵の息を吐いたイヅナをチラリと見た後、アカネは廊下を歩いて行く。イヅナは彼の少し後ろを歩いた。客席は驚くほど静寂に包まれている。

「アカネくんがここにいるということは、アオさんたちもここにいるの?」

イヅナは先日出会ったアカネ以外の四人の顔を思い浮かべる。アカネは面倒くさそうに息を吐き、「知らない」とだけ答えた。

イヅナは窓の外を見る。霧のかかった海が広がっていた。不気味な雰囲気が漂っていた。しかし、波の音などは聞こえてこない。

(何の音もない……。普通の船じゃないことは確かね。それにしても妖の気配もないわ。それにレオナードたちもここにいるのかしら……)