君のとなりで

リビングには、ストーブの柔らかな火が灯っていた。
乃亜がマグカップを2つ持って現れる。

「はい、ホットチョコレート。甘いの好き?」

「うん……ありがとう」

カップを受け取り、真衣は一口飲んだ。甘くて、優しい味がした。

「明日から学校、ちょっと緊張すると思うけど、心配しないで。僕がちゃんと案内するから。……それに」

「……それに?」

「真衣ちゃんのこと、ちゃんと守るよ。絶対に」

その真っすぐな言葉に、真衣の胸の奥が少しだけ熱くなる。

こんな風に言われたの、いつ以来だろう

その時。

「……甘すぎ」

低い声がして振り返ると、階段の途中に礼央が立っていた。

「初日から口説いてどうすんだ、乃亜」

「ち、ちがうよ!別に口説いてなんかないし!」

礼央はそのまま無表情でキッチンへ向かった。

真衣はその背中を見つめた。
冷たく見えるけど、どこか寂しそうで――。

「心強いな……ありがとう、乃亜」

「え、うん……!俺、頑張るよ!」

ちょっと照れたような乃亜の笑顔に、真衣はまた少しだけ微笑んだ。