君のとなりで

中庭の外れ、二階の廊下から見える景色—

図書室を出たあと、なんとなく足が止まり、校舎の窓から中庭を見下ろしていた。

そこに見えたのは、ベンチで笑い合う真衣と乃亜の姿。

乃亜が何かを話して、真衣が笑う。
その顔が、ふわりと光に照らされていた。

──ああいう顔、真衣……俺には見せたことない気がする。

乃亜がタッパーを差し出して、それを真衣が受け取る。
ふたりの距離は、なんだか自然で、心地よさそうで。

礼央は無意識に、窓枠に手を置いたまま、指先に力が入っていた。

「……そっか。あいつ、やっぱり……」

そのとき、真衣がスマホを見て微笑みながら乃亜に何かを話し、乃亜も頷く。
楽しげな空気が、遠くからでも伝わってくる。

礼央は視線を落とし、そっと目を伏せた。


──俺、何してんだろ。
なんで、こんな風に胸がざわつくんだよ。

窓の外では、真衣が乃亜の腕を軽く叩きながら笑っていた。
その仕草すらも、礼央の胸を少しだけ締めつけた。


──たぶん俺、今……ちゃんと、悔しいんだ。

でも、そこに嫉妬だけじゃない感情も混ざっている。
自分ではまだ、うまく言葉にできないけれど。

そんな思いを抱えたまま、礼央はふっと窓から目をそらした。



「……週末、ちゃんと……真衣、笑わせられるかな」

彼の足取りはゆっくりと階段へと向かっていく。
まるで自分の気持ちを確かめるように、一歩一歩。