君のとなりで

放課後。乃亜が笑顔で教室の前に立っていた。

「真衣ちゃん、ここで待ってたよ~!」

「乃亜……ありがとう」

二人で並んで校舎を歩く。途中、乃亜がふと真剣な顔で言う。

「……今日、どうだった?」

「緊張したけど、思ったより大丈夫だった。……乃亜と、礼央のおかげ」

「……そっか」

乃亜はうれしそうに目を細めたあと、少しだけ黙って歩いた。

「ねぇ、真衣ちゃん」

「ん?」

「僕さ、ちゃんと知りたいんだ。真衣ちゃんのこと」

「……え?」

「家族のこととか、辛かったこととか、全部は聞かない。でも……真衣ちゃんが笑ってくれるように、僕にできることがあるなら、したいから」

真衣はそのまま足を止めて、彼の顔をじっと見つめた。
乃亜の瞳はまっすぐで、優しくて、どこまでもあたたかかった。

「……ありがとう。乃亜みたいな人に会えて、よかった」

乃亜は少し照れて笑った。

「僕のほうこそ、だよ」