君のとなりで

学校に着くと、真衣は一気に現実に引き戻された。
知らない校舎。知らない生徒たちの笑い声。響くチャイムの音。すべてが初めてだった。

「こっち、僕のクラスの近くだけど、真衣ちゃんの教室まで案内するね」

「乃亜、俺が案内する」

「え、でも……兄さん、クラス違うでしょ?」

「先生に言ってある。今日は俺が付き添うって」

乃亜が少し拗ねたように口を尖らせる。

「兄さんばっかり……」

真衣が慌てて言う。

「だ、大丈夫だよ乃亜……!どっちでも――」

「……どっちでも、って言われるのも地味にへこむんだけどね」

でもそのあと乃亜はにっこり笑って、真衣の頭を軽くポンと撫でた。

「じゃあ、放課後は僕が案内する番ね」

……優しい。だけど、なにか、あたたかすぎて少しだけ怖い

真衣は胸の奥がふわっとする感覚を覚えながら、礼央とともに教室へと向かった。