一方、羽柴さんはホールの中央で積極的に動き回っていた。


「はいはーい! メニュー説明いきまーす! 今日のおすすめは“羽柴特製・笑顔つきアイスコーヒー”ですよ~!」

「テンション高いなぁ、羽柴」


柊くんが厨房の奥で笑いながら、皿を拭いている。

そんな中、教室の入り口に見慣れない男子生徒が現れた。


「よう、やってるか?」


少しスポーツ刈りの、快活そうな少年。


「白石……!」


一ノ瀬くんが気づいて、歩み寄る。


「お前、文化祭に来るなんて珍しいじゃん」

「お前が誘ったんだろ。“うちのクラスすげーから来い”って」

「いや、言ってねーし」


そんな軽口の応酬に、近くにいたわたし、柊くん、紗英ちゃんも自然と目を向ける。


「お、白石。話には聞いてたぞ。遥の元・ライバルだっけ?」

「誰が“元”だよ、今でも勝手にライバル扱いしてるだけだし」

「へえ〜、でもこの空気、なんかいいね」


紗英ちゃんが笑って、白石くんの肩を軽くたたく。